2020年秋アニメに一言(7、8話)(12/7)

こんばんは。とーとろじいです。

 

始めます。

 

 

『魔女の旅々』7、8話

7話。前半は壁で隔てられた国同士の競い合いと崩壊による和解。後半はブドウ酒をめぐる村同士の争いと和解。似たような話ですが、特に後半の話はコメディでよかったです。

“イキリ”ナちゃんは誰かに気圧されるぐらいじゃないとバランスが取れません。ブドウ酒のアイドルにスタイルをいじられて必死になるイレイナちゃん。そう。そうでないといけないのです。

コメディに寄りすぎではありますが、ここに来て、ようやくいい回が見れました(逆にいえば、真面目なストーリーになるとボロが出るという)

前半の和解の仕方は、焦点化の対象が「国」から「人付き合い」へと移り、また、その言動が視覚化され、アーカイブされることで国民に個人の反省が生まれた結果、和解に至ります。後半は、身体で対面し、ぶつかり合って(「祭り」により)相手を隣人として認めることができた結果、和解に至ります。どちらの和解の仕方も、Twitterにて争いの絶えないこのご時世にヒントを与えているようです(かなり好意的にこの物語を捉えるなら、そういう風にも考えられる)

8話。古風な洋人形屋が出てきてサイコホラーというと、映画『バニー・レークは行方不明』を思い出します。8話は、人形屋さんが人の髪を勝手に切って非正規品の人形を作り、その収益を慈善事業に寄付したりして、経過のなかで生まれる喜怒哀楽の表情を自分のフェチシズムにしていました、というお話。人形屋さんのキャラが濃くて、笑いどころが多く、ホラームードになってなかったのはよかったです。ここ数話は喜劇っぽい話が続いていいですね。

 

『戦翼のシグルドリーヴァ』7、8話

7話のあらすじ。

“富士プライマリー・ピラーの内部に突入したクラウ、宮古、アズズ、園香らを待ち構えていたのは、謎の巨人と、かつて撃墜された戦乙女たちの黒い英霊機だった。” https://sigururi.com/story/?id=ep7より

ということですが、ネタバレをすると、北欧神話のトールが富士山からハンマーを振り下ろして人間側を壊滅させ、そのあと撤退できずにいたワルキューレを助けに「姉御」が出てって死んでしまいましたというお話。

姉御と園香ちゃんの関係がここ数話で進んでいましたが、それなら姉御の死の場面はもっとちゃんと描くべきでしょう。出陣して、次のカットでヒロインたちが戦死を知らされるというのは、いくらなんでも省略しすぎです。そもそも姉御と園香ちゃんの関係をそこまで掘り下げる尺的余裕があったのでしょうか。いや、ない(繰り返しですが、ギャグ回いらなかったのでは?)

全体的にキャラの魅力が感じられないのも問題です(1話の感想で出しましたが、『リリスパ』の波動を感じます)。

姉御のキャラを引き出せないまま感動的な死、では、感動的にはなりません。魅力ある「キャラ」が死ぬということが前提でしょう(Key・だーまえの上手さを見習わなくては)

話は変わりますが、ナナヲアカリがOPを担当するとアレになるというジンクスが始まってるのでは(失礼)

 

池袋ウエストゲートパーク』7、8話

6、7話は内輪問題。

8話。貧困のシングルマザーが男に騙されて(恐喝されて)風俗に堕ちそうになるのを助けるお話。外国人実習生の回よりもいい、これまでで一番いい回でした。

シングルマザーに対し、自分の生活に余裕が出るまで子供を預けるという手段があるのだと説明する主人公の母。自治体やNPOが行なっている支援を知らずに、子供への暴力や自殺に陥る人もいると思います。情報の周知は大事です。非正規労働者における女性の割合は男性の倍多いのですが、今はコロナで更に大変なことになっているようです(昨日、クロ現でパパ活をする女性が増えているという特集をしていました。斡旋している男性は月100万の稼ぎを得ているということで、まさにこの話に出てきた詐欺師にそっくりです)。Twitterでは『池袋ウエストゲートパーク』の世界より喧嘩が多いですが、喧嘩よりも、自治体の支援や国の給付金、相談窓口の紹介を行い、社会全体で情報を共有する方が賢明でしょう。

しかし、こういう社会派作品を見ると、アニメが浸透してきている現代において、アニメの社会的責任というものを意識せざるを得ません。

 

『アサルトリリィ』7、8話

7話でヒュージの死骸から出てきた女の子=ユリちゃんが、8話で民間企業によってヒュージから作られた人造リリィだと明かされます。その企業が、楓ちゃんの親の会社ということで、どうなるんだろーというところです。

『とある』にも似た自治権のある学園で、『宝石の国』のように男性の長のもと、美少女たちが未知の敵と戦い、セカイを守る。『まどマギ』のまどかとほむらのように、リリとユユによるセカイ系と考えてもいいかもしれませんが、『シグルリ』と同じように「美少女だけが出て」「男性的な」ロボットや武器を使いセカイを守るこの手の作品群を何と名付ければいいのかわかりません。セカイ系が百合化しただけと考えてもいいかもしれません。

アサルトリリィの場合、気になるのは登場人物の多さです。ソシャゲ化もする予定の本作。ソシャゲはガチャ商法なので、キャラは基本的に多いと思います。アサルトリリィのキャラの多さはこのあたりの事情も関係しているでしょう。

『艦これ』がそうですが、百合の世界観とセカイ系の流れを組む男性主人公との衝突があって、アサルトリリィではリリが男性主人公の特質(モテる)を引き継いで、百合化に成功しています(艦これにおける司令官は、本作では学長という形で後方に退きます。ちなみに好意を向けられる対象にはなりません)

本作は、人類の外に敵がいるから、国同士で戦わなくなったという設定で、中国人のキャラも仲間にいます。結構ポジティブな設定です。『シグルリ』もそうですね。平和を志向しているのか、それとも現実の政治を考えたくないのか。幸せな家族のような非政治的な「小集団」がセカイを担います。かつてのセカイ系にあった「青年」の自意識はどこへやら。独我的主人公は消失したようにさえ見えます。

 

『おちこぼれフルーツタルト』7、8話

7話は勝負下着にレコーディング、8話はカレー。

このエロ全開、下ネタオンリーといわんばかりの内容は、アイドル業の実態というものを暴き出してるのだと考えれば、攻めた作品なのかもしれない(?)。

アイドルものへのカウンターである(??)

アニメイトタイムズに監督のインタビューが載っていました。

https://www.animatetimes.com/news/details.php?id=1605057407

“川口:『きらら』系の作品はギャグでもないし、エロでもないし、『きらら』という独特のジャンルじゃないかなと思っています。原作の(浜弓場)双先生とお話しした時も最初は『きらら』っぽく描いていたとおっしゃっていて。等身も低めだったけど、今は自分が描きやすいように等身も上がったそうです(笑)。

このアニメでも『きらら』らしく描いてもらえたらと言われたし、僕もそう思っていたので、僕がイメージする『きらら』作品として作っています。”

 いや、それがわかっていてなぜエロ全開なんだ。

“川口:原作の舞台が東小金井で、feel.の所在地でもあるので「これはやるしかないでしょ!」とスタッフ陣の気合が入っていたことを覚えています(笑)。”
 やっぱりそうなんですね。

 

ご注文はうさぎですか BLOOM』7、8話

7話。赤ずきんの格好をしたシャロが「肉食べたい!」と怒る→(シャロちゃんは)狼の方だった!というツッコミ。ごちうさのギャグセンスは間違いないです。

何気に7話は一番いい回だったと思います。前半の畳みかけるようなギャグ。後半は、ハロウィンでチノちゃんの母(幽霊)にここあが出会う話。幻想的でしみじみとしていいです。キレキレのギャグと淡い切なさはごちうさの本質的な魅力。百合日常もののお手本です。

 

安達としまむら』7、8話

7話はバレンタインに備えてそわそわする安達とクールなしまむらの話。クリスマスは安達視点だったので気づかなかったのですが、しまむら視点の今回は、安達の不審者感と安達との距離感が際立っていました。ニヒリストなしまむらとロマンチストな安達。風俗嬢と童貞の差ともいえます。私が高校生の時は周りにニヒリストが多かった気がします。その感覚で見ると、安達は夢女子過ぎです。

安達がしまむらに承認を求めるのは、母の愛情不足からでしょうか。

 

トニカクカワイイ』7、8話

7話。京都旅行回。パンを食べてたカフェは「進々堂  京大北門店」ですね。森見登美彦原作アニメ『四畳半』『夜は短し〜』でも出てましたが、『トニカクカワイイ』でも出るとは。個人的にこのお店には思い出がありますが嫌な思い出です。やめましょう。ナサがカッコいいセリフを吐いてた場所は鴨川デルタかな? アニメ頻出スポットですね。でもそうなるとナサのいた場所とツカサのいた場所は結構近いことになりますね。同じ時間だったかはわかりませんが。

トニカクカワイイ」はツカサのナサへの想いとナサのツカサへの想い、両方の意味だったとは。もう、尊いじゃん……(感想放棄)

8話は家族との初ご挨拶。東大寺法隆寺平城宮跡。奈良満喫の二人。平城宮跡は最近ぽつぽつ施設が出来てきているようですよ。只今、本作とのコラボ企画もやっています。行こうかな……(感想放棄)

※↓声優のインタビュー記事読んでたら、割とヤバかった。

f:id:tautology-TetsugakuJP:20201201041506j:image

http://tonikawa.com/special/special-3/

 

『まえせつ!』7、8話

7話。大阪なんばの名所が次々と。中国・韓国からの観光客で賑わう黒門市場に、歴史ある丸福珈琲店、たこ焼きのわなか、道頓堀ホテルの謎の像。『トニカクカワイイ』といい、関西に来てくれるのはありがたいですね。たとえ吉本という国家奉仕企業とのコラボだとしても……。

8話。「おいで」という喫茶店は知らなかった。「COOL JAPAN PARK OSAKA」、そういえばそういう施設ちょっと前にできたよなぁと思って調べると、吉本も運営に関わってますね。成程。わなかが2話連続で出てきましたが、たこ焼きの歴史的には「会津屋」が古いのです。

出演した新喜劇の松浦景子さんは有名ですね。さらに、声の演技がうまい。ここに来てようやく「聞ける」声が。

『まえせつ!』は、どの話も真面目。「それでいいのか!」とツッコミさえしたくなります。

 

『くまクマ熊ベアー』7、8話

7話。途中で出会った伯爵から一緒に王都へ行くかと提案されて「メリットがない」と断る主人公。『魔女の旅々』のイレイナちゃんがドラゴン退治を断った時の態度と同じですね。どちらもなろう系だからです(ASD的合理性)。『魔女の旅々』が「なろう系で『キノの旅』ができるか」に挑戦しているとして、この作品は「なろう系で(百合)日常系はできるか」に挑戦しているように見えます。言い換えれば「なろう系主人公は日常系に馴染むのか」です。前回も言いましたがそれは日常系の特徴に準じれば不可能です。

「ダンジョン×百合日常系」では『えんどろ〜』などがあります。ここで、『くまクマ』に「日常系」を見出すのはそもそも的外れなのかもしれないとも思われます。

「なろう系主人公によるソフトなダンジョンもの」というふうに還元して考えてもいいのかもしれません。ソフトというのは男性的ではなく女性的で、平和的、穏和なという意味です。「熊」は動物としては人間に対し凶暴ですが、キャラクターとしてはかわいいアイコンです。その二元性と同じように、なろう系の持つマッチョイズムと日常系の持つ女性性がこの作品の中で並走しています。しかしそれは互いにせめぎ合い衝突しているのです。それが私の繰り返し語るところの問題です。「なろう系×ソフト」の問題です。「なろう系×萌え(?)」でしょうか。いずれにせよ、この点が融和されていないように思います。

「日常系」の観点を手放さずに見ると、この作品の欺瞞が表れます。主人公と同年代のヒロインが存在しないことです。出てくる女性は幼女です。7話では同じ15歳の子が出てきましたが、すぐに剣術により主人公とその子との「力の差」が示され、対等になることはありませんでした。女性をたくさん出して日常系的なソフトさを演出しても、「サバイバル」「バトルロワイヤル」「マッチョイズム」を偽装することはできません。仲良くなれる(そばにいる)のは自分より「弱い」人間だけです。水と油の混じり合わなさを感じます。